令和元年度(2019年度)2019.4-2020.3
XがAからYに対する貸金返還請求権を譲り受けたとしてYに対し貸金の支払を求める訴訟において,YがAから金員を受領したことを認めたが同金員に係る金銭消費貸借契約の成立を否認した場合において,次の⑴,⑵など判示の事情の下では,これらの各前訴の訴訟経過等に係る事情を十分考慮せず,Yが各前訴では自らAの面前で金銭消費貸借契約書に署名押印したこと等を積極的かつ具体的に主張していたなどのXの主張について審理判断することもなく,Yが上記の否認をすることは信義則に反するとのXの主張を採用しなかった原審の判断には違法がある。
⑴ AがYに対して建物の明渡し等を求めて提起した前訴において,Aは,Yを売主,Aを買主とする上記建物の売買契約を締結しその代金として上記金員を交付したと主張し,Yは,上記売買契約の締結を否認し,上記金員はAと締結した金銭消費貸借契約に基づく貸金として受領したものであると主張したところ,裁判所は,上記売買契約の成立を認めることはできないとして,Aの建物明渡請求を棄却する判決をし,同判決は確定した。
⑵ 上記⑴の判決後にXがYに対して上記建物の明渡し等を求めて提起した前訴において,Xは,AがYと上記建物につき譲渡担保設定予約をし,予約完結権を行使した上,譲渡担保権を実行して上記建物をXに売却したと主張し,Yは,Aと締結したのは金銭消費貸借契約であると主張しつつ,譲渡担保設定予約の成立を否認したところ,裁判所は,Xの主張する譲渡担保設定予約の成立を認めることはできないとして,Xの建物明渡請求を棄却する判決をし,同判決は確定した。
民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいう。
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは,民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は,当該分割の対象とされた積極財産の価額である。
債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためには,その債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しない。
被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができる。
(補足意見がある。)
不動産の所有権移転登記の申請の委任を受けた司法書士に当該申請の委任者以外の者との関係において注意義務違反があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
固定資産評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として画地計算法を適用する場合,各筆の宅地の評点数は,その適用により算出された当該画地の単位地積当たりの評点数に,各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出される。