令和3年度(2021年度)2021.4-2022.3
被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間で,上記条項に基づく保険金について自動車損害賠償責任保険による損害賠償額の支払分を含めて一括して支払う旨の合意(いわゆる人傷一括払合意)をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,保険会社が上記保険金として保険給付をすべき義務を負うとされている金額と同額を支払ったにすぎないなど判示の事実関係の下では,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から,保険会社が上記金員の支払により保険代位することができる範囲を超えて上記損害賠償額の支払金相当額を控除することはできない。
離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。
不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は,民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできない。
交通事故の被害者の加害者に対する車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条前段所定の消滅時効は,同一の交通事故により同一の被害者に身体傷害を理由とする損害が生じた場合であっても,被害者が,加害者に加え,上記車両損傷を理由とする損害を知った時から進行する。
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。