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宅地建物取引士

制限行為能力者と宅建業  


宅建士メールマガジン 2022-14 号


(質問)被保佐人が同意を得ずに宅建業取引をしたら取り消せる?
(回答)被保佐人自身が宅建業者の場合は取り消せません。

(質問)被保佐人が同意を得ずに宅建業取引をしたら取り消せる?
(回答)2019年の宅地建物取引業法の改正前までは、成年被後見人と被保佐人は、免許欠格事由の一つとなっていました。 しかし、2019年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」により、成年被後見人及び被保佐人の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等に係る欠格条項その 他の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための措置が講じられました。 したがって、現在は、制限行為能力者であることを理由に免許申請を拒否することはできません。

(質問)なぜ上限があるの?
(回答)以前、宅建業者を売主とする売買契約において、買主の債務不履行を理由とする契約解除の場合に、例えば売買代金の3割相当額を損害賠償額の予定又は違約金として定める等、買主に過大な損害賠償の支払いを強いる不当な内容の契約条項を押し付けるという問題がありました。そこで、昭和46年に、消費者の利益を保護するためにこの制度を設けました。

(質問)成年被後見人ってどんな方?
(回答)成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者として、家庭裁判所による後見開始の審判を受けた者をいいます。この審判では、成年後見人が選任されます。成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する契約等を成年被後見人に代わって行います。ただし、成年被後見人に代わって、その居住用の建物またはその敷地の売却・賃貸・抵当権の設定等をするには、家庭裁判所の許可が必要です。
成年被後見人が行った契約等は、成年被後見人本人や成年後見人等が取り消すことができます。他の制限行為能力者と異なり、成年被後見人は、事前に保護者の同意があっても、その同意どおりの行動が取れない可能性が高いので、成年被後見人が行った契約等は取り消すことができます。事理弁識能力のある状態で行われた契約等も取り消すことができます。
ただし、日用品の購入その他の日常生活に関する行為(たとえば、コンビニエンスストアで弁当を買う行為など)は、取り消すことができません。なぜなら、このような行為まで取消が可能とすれば、成年被後見人自身の「身の回りのことは自分でしたい」という意思を無視することになるからです。
したがって、成年被後見人が宅建業を行うことは、あまり想定できません。

(質問)被保佐人ってどんな方?
(回答)被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者として、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者をいいます。成年被後見人よりも精神上の障害が軽い状態にある人です。
被保佐人は、不動産の売買や保証、新築・改築・増築・大修繕をすること等、法律に定められた重要な契約等を行う場合に限り、保佐人の同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可が必要です。

(質問)免許を受けた被保佐人が不動産取引できるの?
(回答)前記のとおり、民法上のルールでは、取引する際に保佐人の同意がなければ、取り消すことができる状態になります。もちろん、商売で行っているのでせっかくした契約を取り消すことはしないと思いますが、その余地を残すのは取引の安全を害することになります。
そこで、2019年の改正により、「宅地建物取引業者(個人に限り、未成年者を除く。)が宅地建物取引業の業務に関し行った行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。」(宅地建物取引業法47条の3)という条文が追加されました。

(質問)未成年者の場合はどうなるの?
(回答)前記の第47条の3は、未成年者を除外しています。ちなみに、未成年者であることは免許欠格事由とはなっていないので、その法定代理人が欠格事由に該当しない限り、免許を受けることはできます。しかし、その際、法定代理人の同意が必要となります。
また、免許取得後に実際に営業を行うには、法定代理人の許可(同意と同じ意味)を得るのが通常です。そうすると、その範囲内では、たとえ法定代理人の個別の同意を得ていなくても不動産取引等の契約を取り消すことができなくなります。
もちろん、その許可を得ていなければ、取り消すことが可能となりますが、そんな恐ろしい不動産業者と取引する人はいないので、実際上は問題にはならないと思います。

(過去問題にチャレンジ!)
【問 題】次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。(2021年度問40)
1 宅地建物取引業者は、その業務に関する帳簿を備え、取引のあったつど、その年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならないが、支店及び案内所には備え付ける必要はない。
2 成年である宅地建物取引業者は、宅地建物取引業の業務に関し行った行為について、行為能力の制限を理由に取り消すことができる。
3 宅地建物取引業者は、一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所に国土交通省令で定める標識を掲示しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密に関し、税務署の職員から質問検査権の規定に基づき質問を受けたときであっても、回答してはならない。















正解:3

1× 案内所は不要だが支店には必要
宅建業者は、その事務所ごとに、その業務に関する帳簿(電子計算機に備えられたファイルまたは磁気ディスクを含む。)を備え、宅建業に関し取引のあったつど、その年月日、その取引に係る宅地または建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければなりません(宅建業法49条)。事務所ごとに備え付ける必要があるので、支店には備え付けなければなりません。

2× 行為能力を理由には取り消せない
宅建業者(個人に限り、未成年者を除きます)が宅建業の業務に関し行った行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません(宅建業法47条3項)。

3〇 宅建業者は、事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める標識を掲げなければなりません(宅建業法50条1項)。「一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」は、事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所に該当します(同法31条の3、同法施行規則15条の5の2)。よって、標識の掲示義務があります。

4× 回答する義務がある
宅建業者は、正当な理由がなければ、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らすことは禁止されています(宅建業法45条)。また、宅建業者の使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、宅建業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはなりません(宅建業法75条の3)。正当な理由のあるときは、守秘義務は適用除外となります。

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筆:Ken ビジネススクール代表 田中謙次
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尚、次回号の配信は 7月29日(金)の予定です 。

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